【ネタバレあり】“チェチェンへようこそ”映画から見るLGBTQ+への迫害

D&I

『チェチェンへようこそ──ゲイの粛清──』 2022年2月26日から上映開始

平日にお休みを取って渋谷のユーロスペースに観に行ってきましたので、あらすじ(ネタバレ含む)を紹介します。

奇しくも、同2月にTicktokのコミュニティガイドライン情報が最新のLGBTQ+への配慮のために改定(次回ブログにて詳細を紹介)されたにもかかわらず、世界ではまだまだナチスの時代のような残虐な行為が行われてしまっています。

ロシアとウクライナ情勢で揺れている今、ロシアが黙認しているチェチェン共和国での真実を知ることができます。

内容がかなり過激なので、覚悟して読んでください。

日本にいると、ついつい平和ボケしてしまいますが、注※平和ボケは悪いことではないです!、このような残忍なことを許さないように、真実を暴いていきたいと思います。

出展 https://www.madegood.com/welcome-to-chechnya/

見どころ

身の危険を冒しながらも現地入りした監督が撮影されたリアルな映像が映画内で挿入されており、残虐なシーンは少しは割愛されているものの、

「警察が車の中でキスしていたゲイカップルを罵倒し顔を殴る」

「車からひきずりおろされ、殴る/蹴るの暴行」

「同性愛者であることを罵倒されながら、犯される」等の映像が挿入されています。

これが21世紀という現代のそしてロシアという名の知れた大きな国で行われている事実なのかと思うと、にわかに信じられませんでした。

また、本作品では、被害者の命を守るためにフェイスダブル(ディープフェイク)技術を駆使しています。モザイクにするよりも、かなりリアルに顔が描かれているのも、見所です。新しい活用法として注目されています。

チェチェンやロシアから逃亡しているにもかかわらず、この技術を採用することでしか証言を得られないというのも、当事者が今でも逃げ続けて怯えていることを如実に表しています。

カディロフとプーチン大統領の関係

第2次チェチェン紛争でプーチン政権のロシアは、チェチェン制圧に成功しました。この制圧での発言や姿勢で大きく国民の支持を伸ばし、2000年3月の大統領選でプーチン氏が初当選したともいわれています。

ロシアで長年、大統領として君臨し続けている原点こそがチェチェンなのです。そのチェチェンの首長カディロフは、プーチンの後押しでチェチェンの実権を握っています。

つまり、強力なプーチンの支持者なのです。プーチンによって、今のポジションにつき、強大な権力をもっています。プーチン大統領にとって重要なのは忠誠で、それが最も強くプーチンと思想が近いのもカディロフといわれています。

Youtube「チェチェンへようこそ─ゲイの粛清─」予告編 (出展 https://www.youtube.com/watch?v=lYEDvj-2e

映画中で引用されているカディロフのインタビューでは、飄々と「この国にゲイはいない」と断言しており、ロシア内のチェチェンという大きな地域を率いている長の発言とはにわかに信じがたいと思います。引用されているカディロフやプーチンのインタビューは、とても不気味で恐ろしく、ロシアという国に対しての絶望感を漂わせています。

残虐で悲惨な同性愛弾圧

このチェチェンで2017年から起きているのが、LGBT+(特に同性愛者)に対する国家規模の大規模な拷問です。もともとイスラム圏のチェチェンでは同性愛者への差別が根強く残っています。

映画でも描かれていますが、
2017年春、違法薬物の調査時に容疑者の携帯電話内に彼が同性愛者である事実を示すデータが見つかります。これをきっかけに、警察は「お前の知っている同性愛者を5人連れてこい」と拷問し、そこから芋づる式に同性愛者が次々と警察に連行されてしまいます。

そこで拷問が行われ、また次の対象を探す、という行為が組織的に行われているのです。
2017年から、ですよ。

衝撃!!!

家族にとっても自分の家族から同性愛者がでることは“大恥”にあたるため、家族は対象者を殺すよう命じられます。自分の家族からも、殺される可能性があるのです。

ロシアから逃げてきた当事者家族が、「権力を持つと悪いことをする人が出てきてしまうのよ」とポツリといった言葉は、権力者を強く批判するほどのエネルギーも残されておらず、なんとも虚しさを強調していました。

今も行方不明...

チェチェンで行方不明になり、同性愛の疑いで連行されたのではないかと言われている歌手Zelimkhan Bakaev氏や、叔父から性的指向をばらされたくなければ俺との性行為に応じろ、と脅迫されている女性がロシア国外に逃げたにもかかわらず、次の逃亡先のビザが下りず、行方不明になっている事件も起きています。

LGBTQ+は今の時代でも処刑される?!

世界には今でもLGBT+の人々に対して死刑を定めている国が11か国あり、10年以上の刑期を定めている国が27か国もあります。(出展 https://ilga.org/

ILGA(国際レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・インターセックス協会)という国際団体が、LGBT+を取り巻く状況を世界地図に示しています。
https://ilga.org/map-sexual-orientation-laws-december-2020

いまはLGBTという言葉もだいぶ認知されてきていますが、わたしはLGBTQ+と表現しています。
LGBTQとは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人)、QueerやQuestioning(クイアやクエスチョニング)の頭文字をとった言葉で、性的マイノリティ(性的少数者)を表す総称のひとつとしても使われることがあります。

※「クエスチョニング」自らの性のあり方について、特定の枠に属さない人、わからない人等を表す言葉です。

日本におけるLGBTQの割合は、現在では約3%〜10%で左利きの数と同程度だと言われています。

おわりに ※ぜひ、この映画をみてほしい

どんな映画よりもショッキングでした。

人権というのは当たり前にあるものだと思っていたけど、

そんなもの簡単に踏みつぶされる世界がある。

まずは知ろうとすること、目撃者になること。

他人事ではなく、すぐ近くで起きていることだと、まさに痛感しています。

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